版権タイトルのゲーム化はクソゲーの宝庫…そう言われたのはもはや遠い過去の話。同名マンガおよびアニメを原作とする本作は、キャラゲーとしてだけでなく3Dアクションとしても高いクオリティを誇るゲームである。
もっとも、同名とは言ってもキャラクターや設定を借りているだけで内容(ストーリー)はゲームオリジナルのものらしい。主人公は訓練を終えたばかりの新人として「公安9課」に配属され、そこで初ミッションからとんでもない大事件に巻き込まれる、というものだ。ゲームのオリキャラが出しゃばらないようにという原作への配慮か、主人公の顔はおろかボイスすら一切出ない。名前も作中すべて「新人」としか呼ばれない。コードネームじゃなくてよかったな。「D-3」とかだったら部隊全滅してたよ。私は押井守のアニメ映画のやつを昔見たことがある程度だが、アレに比べるとこちらはだいぶ軽くて明るい感じの内容になっているので、キャラクターの言動に違和感を覚える人もいるかもしれない。その押井映画も原作とはだいぶ違うらしいが。
ゲーム内容としては「張り付き」アクションが現在の視点から見ても非常にユニーク。壁に張り付けるゲームは過去にいくつもあったが、その多くは壁をアクションの中継地点としてあくまで一時的に利用するというものだった。しかし本作では壁に張り付いたままダッシュやスライドを行うことが可能で、地面と同じように壁面で持続的に戦闘を行うことができるのだ。地面と違うのはジャンプができないことぐらい。フチコマの設定を上手いことゲームシステムに落とし込んでいて感心する。
しかし同時にこの張り付きシステムが本作の一番の悩みのタネでもある。この時代の3Dゲームの多くは「カメラ(視点)がクソ」という共通する問題を抱えており、このゲームもまたそのひとつに数えられてしまうのだ。カメラは常に自機の後方に固定されているので、壁に張り付いた瞬間に一気に視点がぐるんっと回転する。ただでさえ移動スピードが速いこのゲーム、閉所でうっかり横ダッシュなんかした日にはもう大惨事である。もしかしたら製作者もそれを理解していたのかもしれない。ぶっちゃけた話、ゲームを攻略するうえで張り付きが必要な場所はほんの数か所しかなく、ほとんどのステージは普通に地面でジャンプして戦うほうがよほど楽に進める。ボス戦に至ってはそもそも張り付きできないステージも多い。
張り付きアクション自体は非常に楽しいだけに実に惜しいゲームだ。今回改めてプレイして思ったが、楽しいだけでなくロマンがある。敵のヘリとか普通にミサイルで倒せばいいものを、わざわざビルの壁を使って垂直にバルカン撃って倒したくなってしまう。エースコンバットとかで無駄に逆さまになって敵を倒したくなるあの感じ、男の子なら分かっていただけるだろう。ラストミッションみたいなステージがもっと沢山あればもっと楽しいゲームになっただろうに。
[PS] 攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL mission playthrough