操作やゲームシステムの部分ではごく普通のよくある縦シュー。通常ショットとボタンホールドでの特殊ショット、それに加えて回数制限のあるいわゆるボム。普通だな!だがそれはあくまで表の顔。オーソドックスな弾幕シューに見せかけて、実はいろいろと挑戦的なデザインを採り入れているのがこのゲームだ。
ひとつは自機のバリエーションの豊富さである。ゲームスタート前に自機の使い魔、ボムの効果、さらに自機の性能を変化させる強化オプションをそれぞれ組み合わせて選択するのだが、これらの種類が非常に豊富かつとてもバランスが「悪い」。扱いやすいものやトリッキーなもの、個性豊かなさまざまな武装が揃っているのはもちろんのこと、それらの中にチートじみて強力なものや縛りプレイみたいな貧弱なものがいくつかあり、明らかに制作者が選択肢に差異をつけようとしていることが感じられる。これが意図していることはおそらく、プレイヤーに難易度の選択権を与えるということだろう。クリアを目指して安全プレイをしたいなら迷わず強力な武装を選べばいいし、稼ぎプレイや高難易度に挑戦したいならそういう組み合わせにすればいい。他のゲームがイージーだとかノーマルだとかで表現している難易度の選択システムを、武装セレクトという別の形で実装しているというのが私の解釈である。「ゲームバランスが悪い」ということそれ自体がゲームバランスの調整のうちなのだ。そしてそれはとても上手く機能していると思う。
もうひとつはルート分岐、言うなればステージの展開だ。先に挙げた武装の選択システムのおかげもあって本作の難易度は比較的低めで、普通にプレイするとサクサク進んであっさりクリアできてしまい、物足りないとさえ感じるプレイヤーもいるだろう。しかしここにもデザインのトリックが隠されている。このゲームには一定条件で獲得できるスコアボーナスや、特殊なフラグを満たすと出現する追加ボスといった隠しフィーチャーが多数存在し、そしてこれらの条件というのがまた高難易度かつ複雑で、漠然と普通にプレイしているだけではまずお目にかかれないものばかりなのである。ゲームクリア後にボーナスや分岐の存在を知り、ならばとハイスコアを目指して全ボーナス獲得、全ルート全ボス撃破プレイなどを始めると今までのユーザーフレンドリーな難易度が一転、マニアも唸るガチな弾幕シューへとその姿を変える。これもまたプレイヤーが自分のプレイスキルに合わせて自らゲームバランスを調整することを目的としたものだろう。ゲームによくある、ライト層とヘビー層をいかに共存させるかという課題に対するひとつのアプローチの形だと言える。
しかしまあ自分としてはそれが逆に物足りないと感じる要因になってるところはある。私はスコア稼ぎとか縛りプレイとかはほとんどしないいわゆるクリアラーと呼ばれる人種であり、だいたいのゲームはラスボス倒したら終わりという遊び方をしているので、こういう「クリア」のボーダーが曖昧なゲームはいまひとつ身が入らない。また古いゲームばかりやってる割にはノスタルジックな感性があまり無いので、このゲームの大きな特徴のひとつであるローレゾやドット絵に惹かれるものは特に無い。よくレトロ風のゲームのグラフィック設定で、画面に走査線を出したりブラウン管風の画質にしたりするオプションあるけどああいうの一回も使ったことないんだよな。アレ欲しいって人は世界にどれくらいいるんだろうか。とやかく言ってもあくまで個人的なことだ。STGとして良作なことには間違いないのでまあ幅広くオススメできるゲームだと思う。
[steam] BARRAGE FANTASIA 全ブレイク ドラゴン/フラッシュ/セーフティ