刻一刻ト浦

個人的評価 ★★★
オススメ度 ★★★

 今の時代、インディーズゲームは初動が全てである。リリース前の段階でいかに広く認知されるか、またはリリース時にいかに多くの注目を集められるかでその後の命運までもが左右される。さらにそこで高い評価を得られればなおよし。以降そのゲームはセールやアップデートのたびに再度皆が注目し、長期にわたり継続的に売れ続ける明るい未来が待っているであろう。だがそうでないゲーム…初動でコケてしまったゲームに未来は無い。どんなに良質なゲームであろうとも、何度もセールやアップデートを重ねようとも、リリース時に注目されなかったゲームや一度悪評がついてしまったゲームが後にそれを覆すようなことはまず起こらない。本作はその一例である。

 このゲーム、リリース時にあまり話題にならなかったうえにプレイした人からの評判も悪いという、とにかく最悪のスタートだった。ゲームとしてまったく遊べないほど酷いというわけではないのだが、細々とした粗があまりにも多すぎた。それは異常なほどデカいファイルサイズだったり、移動できる場所とできない場所の区別がつかない地形だったり、使うと何故かプレイヤー側が不利になるボムの存在だったり……。そういった致命的とまではいかないまでもプレイヤーのストレスになる小さな不満が山積して、最終的にゲーム全体の価値を大きく損う形になってしまっているというのが概ね本作の総評だった。その評価は日本のみにとどまらず、比較的評価が甘いと言われる海外プレイヤーにすらもnegativeを投じられてしまい、steamのレビューは一時「賛否両論」にまで落ち込んだ。

 ……と、これはあくまでリリース直後のお話。現在は寄せられたフィードバックをもとにゲーム内容の大改修を行った、新生「刻一刻ト浦 2.0」として生まれ変わっている。地形は見やすくなったし、ボムもちゃんと使い道のある強力な特殊兵器に修正された。また既存システムの改修だけでなく、追加要素としてショットタイプに新しいものが加わった。本作のゲームデザインは東方のほか「ぐわんげ」に大きく影響を受けているのだが、この追加された新ショットというのがまた式神攻撃まんまで、元々ぐわんげっぽいのがさらにぐわんげっぽくなっている。正直言ってこれは使っていて楽しい。まあ私がぐわんげ好きだからってのもあるけど、プレイする時は3番ショットをオススメしたい。相変わらずシステムはごちゃごちゃしてるし難易度も高いが、逆にそれらシステムを使いこなせるようになれば相当に無茶な敵が相手でも自機性能にモノをいわせて強引に突破することも可能だ。

 その他演出面にいたっては大型アップデートでもほぼ変える必要がないくらい元からクオリティが高かった。っていうかこのゲームを購入した人の大半はまずビジュアルに惹かれたことが動機ではないかと思う。ノーマルモードを「大安」、ハードモードを「仏滅」と表記するなど、言葉の選び方や各種インターフェースのデザインなどに他に類を見ない非凡なセンスが光っていて面白い。BGMもめちゃくちゃ尖ってて個性的。ラスボス発狂の「合いの手」は耳にこびりつくぞ。

 だがすべてが遅すぎたのだ。よっぽど熱心なユーザーでもない限り、再プレイしてアップデートで変わった箇所をチェックしようとは思わないし、インディーズゲームの紹介サイトなども人気タイトルでもないアップデート情報をわざわざ載せるようなことはしない。2.0になったことで本作は良ゲーたりえるポテンシャルを手に入れたが、それをユーザーまで届けるための手段がもはや存在しないのだ。もしもこの2.0版を最初からリリースできていたら、このゲームの未来はもっと違ったものになっていただろう。時はインディーズ戦乱の世。スキを見せれば…死ぞ。

[動画]

[steam] 刻一刻ト浦 KIKURA 禍(nightmare)モード ノーアイテムクリア

[リンク]

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