第一の悲劇はプロモーションがある意味で成功してしまったことだ。何しろ本作はあのキンブオブファイターズ。歴史も古く、今なお世界中にファンがいる人気シリーズである。それが何を血迷ったか突然のSTG化ってんだからそりゃもう話題にならないはずがない。話を聞いた誰もがその名を口にし、インターネット上ではMADが作られ、まだ発売前だというのに二次創作ゲームまで登場した。
第二の悲劇はオペレーターまでもがその渦中にいたことだ。つまりこのゲーム、とても出回りがよかった。当時すでにアーケードSTGは崖っぷちと言っていい状態にあり、業界最大手のCAVEシューですら入荷を見送るゲーセンがポツポツと目立ち始めていた。にも関わらずこのスカイステージはやたらよく見かけた!どこ行っても置いてあった!ネットの騒ぎに乗ってしまったのか?KOFの名前だけで買ってしまったのか?もしくはMOSSの営業に銃でも突き付けられたか?その理由については知るべくもないが、この出回りのよさが後に余計に傷口を広げてしまうことになるだろうことは想像に難くないだろう。
そして第三の悲劇、それはゲーム内容があまりに「STG的」すぎたことだ。とんでもないクソゲーならばいっそ笑い飛ばすこともできただろう。または拙いゲーム内容でもキャラ要素やストーリーが充実していれば別の人気も出たかもしれない。だがこのゲームはそのどちらも無かった。こともあろうかMOSSはいたって真面目に、あくまでシューティングゲームとしてこのゲームを作ってしまった。おそらく誰もが必ず抱くであろう疑問、「なんで空飛んでんの?」という部分に対しても、ストーリー上ある程度の納得できる説明づけがされており、バカゲーとしての退路を塞いでいる。難易度も明らかにシューター向けに調整されており、もしSTGなど触ったことのない原作ファンが何気なく1コイン入れたならば、1面で瞬殺されてタイトル画面に戻されること間違いなし。腕に覚えのあるシューターでも初プレイで2面を越えられるか怪しいところだ。キャラゲーを難しくしても誰も幸せにならないって我々はコンボイの謎で学んだはずだろ!なぜ人は同じ過ちを繰り返してしまうのか。しかもただ難しいだけでゲームとしても特に面白いわけではないのがどうしようもない。
一応、ボスに関してはそれなりに考えて作られてるなと思えるところはある。それぞれキャラクターの設定に合ったそれっぽい攻撃になっているし、デタラメなランダム弾ではなくちゃんと撃ち方、避け方を意識して作られていると感じる。もっとも、そう思えるようになるまでにはそれなりにプレイを重ねないといけないし、大多数のプレイヤーはその前にやめるだろうけどな!
あとは…そう、アテナだ。もしこのゲームをやるならアテナを使うことを強く推奨する。キャラ性能的に弱くもなく強くもなく、また各種必殺技も攻撃と補助のバランスが良くて恐らく使っていてもっとも楽しいと思えるキャラだ。Lv1のテレポートでザコの弾を切り返しまくるのは気持ちいいぞ。何より空を飛んでいても違和感が無い(最重要項目)。
そんな本作のこと、当たり前のことだが誰もプレイしなかった。発売前はネタにしていた人々もいざ発売されたとなると皆一様に目を背け口を閉じ、その存在を無かったことにした。ついでに後に予定されていたネシカ版の配信も気が付いたら中止になっていた。このゲームは触れてはならない暗部だったのだ。まかり間違ってもオススメなどできないが、何故オススメできないのかを知ってもらうために逆にぜひプレイして欲しいとも思う。まあ、なんだ、ネオジオヒーローズよりは面白いよ。