私はSTGのことを語る時、よくこのゲームの名前を引き合いに出す。「これは紫炎龍に比べて〜」とか「紫炎龍と同じく〜」みたいな。それはこのゲームが極めて平凡で平均的で使いやすいからだ。この時代に発売されたSTG…簡単なもの難しいもの、シンプルなもの複雑なもの、硬派系萌え系、クソゲー良ゲー…それらを一堂に並べたとして、その時ちょうど真ん中に来るのがこの紫炎龍なのだ。いや実際どうなのかは知らんけど。とりあえず自分はそう思ってるし、ついでに言えば極端な信者やアンチもいないので気軽に名前を出してネタにできる、とても「便利」なゲームなのである。発売後しばらくは本作が童の代表作としてその存在感を示していたのが、トリガーハートのヒットによってその地位すらも取って代わられ、ますます特徴の無い地味なゲームになってしまった。
特筆すべきことがあるとすればゲーム内容よりも出自についてだろうか。本作を作ったゲーム会社「童」はかつてアテナに在籍していたスタッフ数名が独立して立ち上げた会社であり、この紫炎龍は同スタッフが過去にアテナで製作した「大王」というSTGの実質的な続編と言える内容になっている。ショットやボムの性能など基本的なデザインはだいたい同じ。ランクを上げないようにパワーアップを避けて進むのが攻略のセオリーなところも大王由来だ。
ただ開発スタッフが移籍したからと言ってゲームの権利まで持っていくことはできないわけで、依然大王の権利をアテナが所有している以上表立ってこれは大王の続編だとアピールすることはできなかった。見た目も内容もまんま大王なのに、童自身も各種メディアも不自然なくらいその関連性に触れない奇妙な立場のゲームであった。スタッフが独立した経緯については詳しく知らないが、平凡なゲームデザインとは裏腹にこの紫炎龍は権利的にはかなりギリギリを攻めたゲームだったのかもしれない。もしくは単にみんな興味なかっただけか。
……ところで2017年ごろに童の社長が行方不明で版権の交渉ができない状態にあると聞いたのだが、あれから所在は判明したのだろうか?権利問題をクリアできればトリガーハートの移植や続編が出るかもしれないので、社長を見つけた方はぜひM2あたりに知らせてあげてほしい。
[PS2] 紫炎龍 SHIENRYU なるべく青を取らずに2-ALL