SeekerMemoria

個人的評価 ★★★★
オススメ度 ★★★

さてどこから説明したものか。まず「Wolf RPG Editer(通称:ウディタ)」というフリーソフトがあって、これは言わば「RPGツクール」のようなものである。まだツクールが低機能でそれほど複雑なゲームが作れなかった頃に、無料でありながらツクールより多機能だとして注目を集めたソフトだ。…と同時にツクールとは比較にならないほど難解で複雑なインターフェースにより、若きゲームクリエイター志望たちを絶望の淵に叩き落す悪魔のソフトであるとも言われている。

年に一度、そのウディタによって製作されたゲームを持ち寄り、その年のもっとも優れたウディタ製ゲームを決めるコンテストが開催される。それが「ウディコン」だ。歴史の古さもさることながら、企業の絡んでいない完全な個人主催のゲームコンペとしてはたぶん国内最大規模なんじゃないかと思う。出展されるゲームはもちろん全てがフリーゲームであり、順位もユーザーの投票のみによって決定される。一応は非公式のコンテストということになっているが実質公式みたいなものである。

ようやく本題だが本作は2020年のウディコンに出展され、全83作品という例年にない作品数の中から総合順位で19位の高評価を得たゲームである。かく言う私自身も投票に参加し、このゲームにはそれなりの高得点をつけさせてもらったのだが正直ここまで上位にくるとは思いもしなかった。

最初は画面左右の謎パラメータの数々を見て「げぇっ!へるしんか!」みたいな感じになるが、システム自体はそう複雑ではなくショット+ボムの普通のSTGだと思っていい。通常ショットは広範囲と前方集中をリアルタイムに切り替えるよくあるやつで、それにパワーショットという特殊攻撃とボムがある。一般的なSTGと異なる部分でゲーム性に大きな影響を与えているのは、残機に加えてさらにHP制であるというところだろうか。それもかなり大判振る舞いな仕様で、ただでさえ1発2発被弾したくらいではミスにならない上に減ったHPは敵弾にカスることでモリモリ回復し、あっという間に全回復する。なのでヘタに敵弾を避けるより回復前提で無理やり押し通るほうが結果的に有利になる状況も多い。そのへんの調整は好みが分かれるところかもしれないが、決してHP制だからと雑に作ってあるわけではなく、むしろストレスなくプレイしてもらおうという細かい気配りが見て取れるゲームだ。次にどの敵が出てくるかをあらかじめ予告してくれるところなんかはとても気の利いたデザインだと思った。敵の出現位置を予告してくれるゲームはたくさんあるが、敵の種類まで教えてくれるというのは非常に稀だ。ずっと同じ背景が続くゲームはステージの進行状況が分かりづらくてパターンが組みづらいのでとても助かる。

しかしパワーショットの存在がゲーム性といまいち噛み合ってない気がする。いやパワーショット自体はすごく良いシステムなんだが、消費リソースがHPというのが少々問題だ。たぶん攻撃と防御どちらにリソースを割くか、という駆け引きをさせたかったのだと思われるが、パワーショットで敵に与えられるダメージに対してHPが減るリスクがあまりに大きすぎる。HPに余裕がある序盤ならともかく、いつ被弾してもおかしくない終盤ともなると保険としてHPは常にMAX状態を維持しておくことが非常に重要。そうなるともはやパワーショットはまったく使わなくなってしまう。私がFragile(一撃死)モードばかりやってたのもそれが理由だった。どうせ一発で死ぬんだから、とHPを気にせずパワーショットをゴリゴリぶっぱなせるのが非常に楽しいのだ。いっそボム無くしてパワーショットだけでよかったんじゃないか。まあそうやってプレイヤーが自分なりの遊び方を工夫できるのもこのゲームの良いところなんだが。

私…というかこのサイトの方針としては、評価は純粋にゲーム内だけで行いプロダクトの部分はなるべく考慮しないようにしているのだが、ウディタでこのレベルの弾幕STGを作ったという事実には驚嘆したと言わざるを得ない。作者はウディタが一番使いやすいと言っているが、それはSTGガチ勢が「達人王は覚えれば簡単だよ」と言うのとたぶん同じなので信じないほうがいいだろう。

[動画]

[PC] SeekerMemoria Fragileモード バリア&オートボム無し 真ボス(裏)クリア

[リンク]

ダウンロード / 作者twitter / ウディコン公式

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